多様な中国語

中国語の文字表記は大きく簡体字繁体字に分かれます。

簡体字は中国大陸・シンガポール・マレーシア(学校教育)などで使用され、繁体字は台湾・香港・澳門、さらには東南アジア諸国の一部地域や北米地域でも使用されております。

しかし同じ簡体字圏に属する中国大陸とシンガポールを比較した場合でも、単語によっては異なる表記になることもあります。 また繁体字圏の香港・澳門と台湾を比較しても、表記が異なる例があります。 つまり、簡体字圏でも繁体字圏でも、地域によって表記や用法が異なるということです。

この中国語において、最もご依頼が多いのが中国大陸向けの簡体字と台湾向けの繁体字です。 両者の違いは様々な点が挙げられますが、まずすぐに分かることとして字体の違いだけでなく、ここでも単語によっては異なる表記になるということです。 以下はその一例です。

日本語 簡体字 繁体字
地球温暖化 全球变暖 全球暖化
ラオス 老挝 寮國
ジェットコースター 过山车 雲霄飛車
ソフトウェア 软件 軟體
マグロ 金枪鱼 鮪魚

 

ここに紹介した以外にも表記が異なる単語は多く、実際『両岸(中国大陸と台湾)用語差異対照ハンドブック』ごとくの書籍が大陸側・台湾側の複数の出版社から発売されているほどなのです。

ところで、よくある問い合わせとして、香港向けに広東語、また台湾向けに台湾語をご依頼される方がおられますが、広東語や台湾語は基本的に「話し言葉」です。 香港ではPOP広告やインターネットでの書き込みなどで時折広東語が使用されていますが、正式な文書は標準語という書き言葉を使用します。 台湾でも台湾語は話し言葉であるゆえに、今でも正書法は存在せず、正式な文書は「國語」という標準中国語を使用しております。 そのため、翻訳という文字に残す作業において、広東語や台湾語で表記にする機会は多くはないのです。

以上のように、一口に中国語といっても様々ですので、まずはターゲット地域や用途を明確にしたうえで、それに応じたスタイルに仕上げていくことが極めて重要になります。